◆ありの「スポーツどうなん?」
第52回 ふうせんバレーの落とし穴?!(その4)
北九州市障害者スポーツセンターアレアス
所長 有延 忠剛
ふうせんバレーのリスクをこれまで数回にわたり紹介してきた。今回、最後にご紹介するのがこれだ。
大げさな表現と思われるかもしれないが「スポーツへの夢と期待を裏切るリスク」である。
数年前、ある機関誌の寄稿文で、「決してスポーツが得意でなかった自分がその昔、クラスマッチのバレーの試合で、コートの一番後ろに立たされ、ミスをすると、みんなから文句を言われ、ますますスポーツが嫌いになった。」というのがあった。スポーツが好きでない方の中で、同様の経験者は少なくないだろう。その先にはこう続けてあった。「ふうせんバレーに出会って人生で初めてスポーツが楽しいと思うことができた。」
それだけではない。四肢の機能を失ったり、寝たきりの状態だったり、ふうせんバレーは、スポーツとは縁遠いと思われがちな方へスポーツの参加機会をつくるとともに様々な人との出会いの中で人生をより豊かなものとする可能性を秘めてさえいる。日本が「一億総スポーツ社会」を目指す中で、ふうせんバレーボールはスポーツ界のまさに切り札ともいえるのである。
その切り札が、である。一縷の望みを懸けて参加した方に対し失望を与えたとしたならどうなるだろう。「もう、二度とスポーツなんて・・・」となるおそれもあるのではなかろうか。極めて残念であるが、そのような場面に出くわしたことが実は何度かある。
指導員はまさに医者と同じ。対象者のスポーツへのニーズが適切に診断され、ふうせんバレーという薬の「効能」、「成分・作用」そして「用法・用量」を理解し、正しく処方されることを願っている。